簡単なカラー(色)遺伝学 (2007.5/23)

同じ形質の遺伝子が組み合わさったものを「ホモ結合」と呼びます。

形質の違う遺伝子の組み合わさりを「ヘテロ結合」と呼びます。
ヘテロ結合には優勢順位が発生します。

カラー遺伝子に付いても諸説あることを理解下さい。

特にソリッドコートに付いて、Aシリーズにて表現するか、Kシリーズにて表現するかの2派があり、優性順位においてもソリッドをKと表すものと、kと表すものとがあります。

私は、カラー遺伝学を学んだ教授の説、実際の繁殖経験・結果、他の専門ブリーダーの経験、各種書籍に基づく意見から別記の様に考えています。
よって、他者とは表し方が違う場合も多々ございますことを承知下さい。

犬のカラー遺伝学とは、実際その程度しか研究されていないものでもあり、今後研究が進むにつれ新たに遺伝子座の加減や優性順位の変動もありえると理解下さい。

優性遺伝子とは、対立する遺伝子で、より強く、近い表現型を表す遺伝子を指します。
優性遺伝子が1つでも入った結合ならば、必ず優性遺伝子の発現がおこります。
劣性遺伝子の発現は、劣勢同士のホモ結合しかありえません。
とは言うものの、ヘテロ結合でも発現の仕方によっては見た目だけですと劣性遺伝子のホモ結合による発現と見間違えてしまう場合も多くありますので注意は必要です。

「優性とは、素晴らしい良い遺伝子」「劣性とは、その部位が劣っている悪い遺伝子」などではありません。日本語の表記だけの差です。

よく言う「劣性遺伝子は、血統に隠れ、子々孫々に遺伝していく」「劣性遺伝子って、消せない」なんてことはありません。
優性遺伝子が1つでも入った場合の表現型が優性となることから、劣性遺伝子は表現されず、見た目だけですと削除されたように思い込んでしまいます。
そのまま劣性遺伝子が子孫に遺伝され、同じ劣性遺伝子を持った交配相手に巡りあった時、その子犬には劣性因子が表現されます。
遺伝学を学んでいない方には、それが突然現れた劣性遺伝子と感じてしまい、結果として「劣性遺伝子は強いから、血統の中に隠れて遺伝していく」「劣性は消せない」となるのでしょう。
優性遺伝子のホモ結合を行わせるだけで、劣性遺伝子は影も形も無くなります。

発現色によっては、見た目だけでは劣性遺伝子の発現に見える場合がありますが、将来においては変色、仔犬への遺伝等により、優性遺伝子であると証明されます。
つまり、目測だけですと分りにくかったり、間違えたりする危険性もあると承知下さい。
繁殖を志す者ならば、祖父母、親、兄弟、子犬の発現色を見て、血統書を信じるだけではなく、本来持っている遺伝子座を把握するべきです。

長年固定化された犬種においては、対立する遺伝子がなく、毛色の変化の無いカラーがあります。(ダックスフンドのグレー、マルチーズの有色、パグのチョコレートなど)
それは、元来その犬種自体に持っていなかったり、排除してしまったカラー遺伝子です。

逆に、元来は持っていなかったはずのカラーが発現し、血統書の申請団体から追加として認められるケースもあります。(ダックスフンドのソリッドブラック、ブルー、パイボールドなど)
これは、固定化された後に別犬種の血統を入れ(異種交雑)て、カラー遺伝子のバリエーションを増やしたことか、突然変異として発現したカラー遺伝子を利用しているとなりますが、圧倒的に前述の他犬種との交配によりカラー遺伝子が増えたと考えることが一般的です。

欧米では、日本に比べられぬほど、カラー遺伝子に付いての研究がなされております。
それは、レアカラーを求めた繁殖が非常に多く行われているが為です。
付加価値を高め、生体価格を上げるための手段として、レアカラーの作出があるのです。
本来持っている自然な毛色から、人間の都合によって、毛色を変色、希釈していることがカラー・ブリーディングであると忘れてはいけません。

間違えたカラー遺伝子を学んだ結果、先天性の奇形や欠陥を持った子犬を作出する可能性は高くなります。
ダップルの場合、ヘテロ結合でさえ1/3以上、ホモ結合になると3/4以上の子に、視聴覚障害、内臓疾患、脳障害、早死が認められるという文献もあります。
命に遣り直しはありません。
掛け替えのない生命を作出するブリーダーは、常に自らを戒める必要があります。

又、出来る限り分りやすく簡単にする為に、詳細な説明は端折り、発色に付いても分りやすく極めて単純に表記してあります。
更に詳しくお知りになりたい場合、専門家に付いて学ぶなりして下さい。

カラー遺伝子は命に関わる交配にも繋がりますので、表記・記載ミスなどございましたらご指摘願います。